ドイツ、ヒュルスタ滞在記 vol.7 「グループ企業を訪問」

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ドイツ、ヒュルスタ滞在記 vol.7
「グループ企業を訪問」


ヒュルスタの正式名称は「hülsta-Werke Hüls GmbH & Co. KG」。
有限合資会社で、非上場企業です。
ドイツでは、大きな会社であっても上場していない会社があります。例えば世界的な工具メーカーのBOSCH(ボッシュ)も非上場企業です。上場しないことで、創業者一族の経営方針を強固にする目的があります。
ヒュルスタも、創業家であるHüls家が、信頼のおける人物に経営を委任し、非上場を続けています。ちなみに日本でいうところの株式会社は、ドイツでは「AG」。メルセデスベンツの社名は「Daimler AG」です。


ヒュルスタは、巨大なグループ会社の中核です。
そのグループの中には、
・大塚家具で取り扱いのある高級ソファメーカーのRolf Benz(ロルフベンツ)
・ドリームベッドから販売されているベッドのRuf Betten(ルフ)
・床材や壁材のParador(パラドール)
・突板などの材料を一手に引き受けるhobb(ホッブ)
・物流のSLC
・その他146年の歴史を持つ老舗家具メーカーのLoddenkemper
・手頃な価格帯の家具を製造販売するArteM
などがあります。ヒュルスタはインテリアに関する一大グループ企業なのです。


Rolf Benz

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ヒュルスタのショールームでは、ソファは全てロルフベンツ。ミラノメッセやケルンメッセなどの展示会のときも、ロルフベンツのソファとコーディネートしています。
かつてソファは応接室に置かれる家具でした。それを今のようにリビングにも置くように提案したのが、実はロルフベンツなのです。ロルフベンツが1964年に発表したコーナーソファによって、家族がリビングで寛ぐための家具へと変わっていきました。
現在ではソファ以外に、パーソナルチェアやテーブル、ラグ、バッグなども製造しています。

 

Ruf betten

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ルフの本社は南ドイツにあり、ヒュルスタのあるシュタットローンからは、車で約半日かかります。
ルフのベッドの特徴は、布張りフレーム(アップホルスター)にあります。
最近ヒュルスタのシリーズの中にも、布張りのベッドがラインナップされてきているのは、このルフのアップホルスターの影響と言ってもいいでしょう。
ルフもヒュルスタと同じマットレスとウッドスプリングを、ベッドフレームにセットしています。しかし、提携しているドリームベッドが製造している日本ライセンスタイプは、ウッドスプリングは使用せず、ドリームベッドのコイルマットレスが床板の上に乗っています。

 

Parador

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家具ではありませんが、ヒュルスタ本社から30分ほどの距離にあるパラドールも紹介します。
ヨーロッパでも特にドイツ人は、「Do it yourself」が大好きです。滞在中、ヒュルスタの社員の家に何度か訪問しました。大抵彼らは自分たちで家の内装を行っています。家具を組み立てる。家具を壁に取り付ける。壁の色を塗る。そして床のフローリングまでも貼る。
ヒュルスタの社員だから特別なんだと、最初は思っていましたが、パラドールに行ったときに納得しました。パラドールには、自分でフローリングを貼るのを練習するための施設を持っています。単純なストレート貼りから少し複雑なヘリンボーン貼りのようなものまで、親切丁寧にコーチしてもらえるのです。

ヒュルスタのプロダクトデザイナーDetlofは、シュタットローンから車で1時間弱のミュンスターに住んでいます。彼の家は、そのミュンスターの市街地から少し外れた、とてものどかな川沿いの一軒家。家の裏口から川に降りて、ボート遊びができます。
訪ねたときは、ちょうどキッチンのリフォームをしているときで、自分たちで壁や天井を塗り、タイルを貼っていました。自分だけのオリジナルの住まいづくりが、とても魅力的に映りました。

 

グループ企業を訪問したり、ヒュルスタの社員宅を訪ねたりするときの移動には、車が欠かせません。その際にに使うのが、かの有名なアウトバーン。速度制限なしの高速道路ですが、すべてが無制限ではなく、区間によっては制限速度があります。
私もドイツ滞在中にアウトバーンを走ったことがあります。カーブの少ない道路を、車の流れが合わせて走行するので、知らず知らずのうちに時速200キロを超えるスピードで走っていました。さすがにあの時は集中力が半端なかったと思います。f:id:rhino-blog:20061221185125j:plain

 


本社での研修が終わり、日本に帰るある日のことです。
空港まで送ってくれるドライバーが時間になっても来ません。電話してみるとまだ彼は家にいて、シャワーを浴びていていました。ホテルを出発して、普通ならもう間に合わないと、諦めてしまうような時刻です。しかし役員の専属ドライバーでもある彼は、まったく慌てる様子がありません。そしてアウトバーンに入ると、おもむろにサングラスを掛け、アクセルを踏み込みました。
まるで羽根がついていたら空を飛びそうなスピードで、隣の時速200キロで流れる車の列をあっという間に抜き去り始めました。そして余裕でデュッセルドルフ空港に着いたのです。

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ちなみに、ヒュルスタの役員専用のドライバーたちは、ベンツのテストコースで、どれくらいのスピードでハンドルを切っても大丈夫なのか、アイスバーンでのスリップ時にどうやって元に戻すのか、というようなトレーニングを受けているようです。


※2017年3月31日改訂